す。」とその虫は眼《め》をさまして答えました。
「原っぱのまんなかの木さんのところでお祭《まつ》りがありますよ。あなたもいらっしゃい。」としじみちょうがさそいました。ほたるが、
「でも、私《わたし》は夜の虫だから、みんなが仲間《なかま》にしてくれないでしょう。」といいました。しじみちょうは、
「そんなことはありません。」といって、いろいろにすすめて、とうとうほたるをつれていきました。
 なんて楽しいお祭《まつ》りでしょう。ちょうちょうたちは木のまわりを大きなぼたん雪のようにとびまわって、つかれると白い花にとまり、おいしい蜜《みつ》をお腹《なか》いっぱいごちそうになるのでありました。けれど光がうすくなって夕方になってしまいました。みんなは、
「もっと遊んでいたい。だけどもうじきまっ暗《くら》になるから。」とためいきをつきました。するとほたるは小川のふちへとんでいって、自分の仲間《なかま》をどっさりつれてきました。一つ一つのほたるが一つ一つの花の中にとまりました。まるで小さいちょうちんが木にいっぱいともされたようなぐあいでした。そこでちょうちょうたちはたいへんよろこんで夜おそくまで遊びました。



底本:「ごんぎつね 新美南吉童話作品集1」てのり文庫、大日本図書
   1988(昭和63)年7月8日第1刷発行
底本の親本:「校定 新美南吉全集」大日本図書
入力:めいこ
校正:鈴木厚司、もりみつじゅんじ
2003年9月29日作成
青空文庫作成ファイル:
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