三太はだれでもいじめるんだよ。ぼくたちは同級だからいじめないけど、年下のものならだれでもなかすんだ。帽子をとりあげたり、堤《どて》の根方《ねかた》におしつけたり、するんだよ。
長女 でもね、よし坊は栗《くり》の実をポケットにいっぱい持ってって、三ちゃんに、もういじめないでねって、あやまるんだってさ。よし坊はとても外に出たがるのね。
母 そう、外でみんなと遊びたいのさ。でも病気だからいけないのですよ。病気がこの子にとりついていて、いかせないんですよ。病気ってどうしてこんな罪もない子にとりつくのでしょう。
長女 おかあさん、よし坊はずいぶんやせたね。手なんかむぎわらみたいね。
長男 頭もあや子のゴムまりくらいだ。
次男 きのう、帽子がかぶりたいっていったからね、ぼくが柱からはずしてきてかぶせてやったら、すこすこ[#「すこすこ」に傍点]してたよ。目までかぶさっちゃって、とてもおかしいんだよ。
母 さあ、たあちゃんはもうこれでいいのよ。こんどは、あや子。あや子にはどの着物がいいかね。
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(たんすをあける)
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長女 あたしは、唐《とう》ちりめんがいいわ。ほら、つばきの花の。
母 つばきの花のって?
長女 おとうさんのお葬式《そうしき》んとききたのよ。あたしよくおぼえててよ、こっちの肩のとこに、つばきの花がふたつかさなってたわ。こうするとよく見えるのよ。花のにおいがかげるくらいのそばに。
母 ああ、これだね、まだきられるかしら。
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(女の子きる)
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母 すこし短いわね。むりもないね、あれから、もう四年になるんだから。
長女 これよ。あたし、この着物とても好き。ほらね、かあさん、この肩んところに花があるでしょう。お葬式でお墓《はか》にいったときにね、あたしが叔父《おじ》さんや叔母《おば》さんたちの間で立ってたら、白いちょうちょうが舞ってきて、あたしの肩のこの花にとまったのよ。あんときあたし、おとうさんがなくなって、悲しくってないてたわ。
母 こっちいおいで。ぬいあげを下ろしてあげます。おや、なにか落ちましたよ。ねずみのふんみたいなものが。
長女 あらいやだ。そ
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