売られていった靴
新美南吉

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)靴屋《くつや》
−−

 靴屋《くつや》のこぞう、兵助《へいすけ》が、はじめていっそくの靴《くつ》をつくりました。
 するとひとりの旅人《たびびと》がやってきて、その靴《くつ》を買いました。
 兵助は、じぶんのつくった靴《くつ》がはじめて売れたので、うれしくてうれしくてたまりません。
「もしもし、この靴《くつ》ずみとブラシをあげますから、その靴《くつ》をだいじにして、かあいがってやってください。」
と、兵助《へいすけ》はいいました。
 旅人《たびびと》は、めずらしいことをいうこぞうだ、とかんしんしていきました。
 しばらくすると兵助は、つかつかと旅人のあとを追っかけていきました。
「もしもし、その靴《くつ》のうらの釘《くぎ》がぬけたら、この釘《くぎ》をそこにうってください。」
といって、釘《くぎ》をポケットから出してやりました。
 しばらくすると、また兵助は、おもいだしたように、旅人のあとを追っかけていきました。
「もしもし、その靴《くつ》、だいじにはいてやってください。」
 旅人《たびびと》は
次へ
全2ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
新美 南吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング