はかわいそうだから、夜になったら、町まで行って、坊《ぼう》やのお手々にあうような毛糸の手袋を買ってやろうと思いました。
暗い暗い夜が風呂敷《ふろしき》のような影をひろげて野原や森を包みにやって来ましたが、雪はあまり白いので、包んでも包んでも白く浮びあがっていました。
親子の銀狐は洞穴から出ました。子供の方はお母さんのお腹《なか》の下へはいりこんで、そこからまんまるな眼をぱちぱちさせながら、あっちやこっちを見ながら歩いて行きました。
やがて、行手《ゆくて》にぽっつりあかりが一つ見え始めました。それを子供の狐が見つけて、
「母ちゃん、お星さまは、あんな低いところにも落ちてるのねえ」とききました。
「あれはお星さまじゃないのよ」と言って、その時母さん狐の足はすくんでしまいました。
「あれは町の灯《ひ》なんだよ」
その町の灯を見た時、母さん狐は、ある時町へお友達と出かけて行って、とんだめにあったことを思出《おもいだ》しました。およしなさいっていうのもきかないで、お友達の狐が、或《あ》る家の家鴨《あひる》を盗もうとしたので、お百姓《ひゃくしょう》に見つかって、さんざ追いまくられて、命からがら逃げたことでした。
「母ちゃん何してんの、早く行こうよ」と子供の狐がお腹の下から言うのでしたが、母さん狐はどうしても足がすすまないのでした。そこで、しかたがないので、坊《ぼう》やだけを一人で町まで行かせることになりました。
「坊やお手々を片方お出し」とお母さん狐がいいました。その手を、母さん狐はしばらく握っている間に、可愛いい人間の子供の手にしてしまいました。坊やの狐はその手をひろげたり握ったり、抓《つね》って見たり、嗅《か》いで見たりしました。
「何だか変だな母ちゃん、これなあに?」と言って、雪あかりに、またその、人間の手に変えられてしまった自分の手をしげしげと見つめました。
「それは人間の手よ。いいかい坊や、町へ行ったらね、たくさん人間の家があるからね、まず表に円《まる》いシャッポの看板のかかっている家を探《さが》すんだよ。それが見つかったらね、トントンと戸を叩《たた》いて、今晩はって言うんだよ。そうするとね、中から人間が、すこうし戸をあけるからね、その戸の隙間《すきま》から、こっちの手、ほらこの人間の手をさし入れてね、この手にちょうどいい手袋頂戴って言うんだよ、わかったね、決
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