の宮殿《きゅうでん》は、美しいけれど、大理石の建物《たてもの》がないのは、玉にきずだとある旅人《たびびと》が申《もう》していました。大理石の塔《とう》でもたてられてはいかがですか?」
「なるほど、それはよかろう、しかし、大理石というのは、いったいどこにあるのか?」
「ここから、ずーっと南の方へ、山を一つと沙漠《さばく》を一つこえていくと一つの部落に着きます。そこに、大理石はいくらでもあるそうです。」
「そうか、けれどだれがとりにいくのか?」
「それは、いま都《みやこ》にいる巨男《おおおとこ》がよいでしょう。彼はたけが椰子《やし》の木ほどで、一足で小さな丘《おか》をこえてしまいます。」
「では、その男をよべ。」
巨男《おおおとこ》は宮殿《きゅうでん》につれられていきました。そして王様から、大理石をとりにいくように命ぜられました。にげるといけないからというので、巨男《おおおとこ》の足には鉄の鎖《くさり》がむすばれました。
「ではいってきます。」と巨男《おおおとこ》はいって、やはり白鳥をつれ、南の方へ旅立ちました。巨男《おおおとこ》の進むにつれて、宮殿《きゅうでん》にたまっていた鎖《くさ
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