さまほどごりっぱなおかたが、世界中にまたとあるかッ。」
 そして、もっていた金づちをふりあげました。
 王さまは靴屋《くつや》の店からとびだしました。とびだすとき、ひおいの棒《ぼう》にごつんと頭をぶつけて、大きなこぶをつくりました。
 けれど王さまは、こころを花のようにあかるくして、
「わしの人民《じんみん》はよい人民だ。わしの人民はよい人民だ。」
とくりかえしながら、宮殿《きゅうでん》のほうへかえってゆきました。



底本:「ごんぎつね 新美南吉童話作品集1」てのり文庫、大日本図書
   1988(昭和63)年7月8日第1刷発行
底本の親本:「校定 新美南吉全集」大日本図書
入力:めいこ
校正:鈴木厚司、もりみつじゅんじ
2003年9月29日作成
青空文庫作成ファイル:
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