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童子等。(唄。)
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夕やけ小やけ。
摩訶陀《まかだ》の池の
さんしよの魚は
きらきら光る。
玻璃《びいどろ》のふらすこ
ちんたの酒は
きらきら光る。
鐘が鳴る。鐘がなる。
寺の御堂《みだう》の
十字の金《かね》は
きらきら光る。
年|少《わか》き姉妹の順礼|御詠歌《ごえいか》うたひながら下手より登場。姉なるは盲目《めしひ》なり。
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姉の順礼 (程よき所に立留り、もの怪しむ気はひ。)何やら怪《あや》しい音がするがのう。この近くに海でもあるかいのう。
妹の順礼 何の、姉《んね》や。京の都には海があるもんかの。
姉の順礼 そんなら河の音か。そや無けりや風かいのう。わしや滅相《めつさう》草臥《くたぶ》れた。今日の宿はまだかいなあ。
妹の順礼 そやつて姉《んね》や。嚮《さき》からまだ一里とも来やせぬわ。
姉の順礼 何処ぞで歌うたふ声が聞えるやうやのう。
妹の順礼 姉や。此処《ここ》は立派な寺やんどの。何様ぢや知らぬけれども拝んで行かうよ。
姉の順礼 さうかいな。お寺ならば善う拝んで行かうの
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