地びたの上に寝てゐるのださうだ。
「ぢいさん、また来たな」と、さういふ話を知つて居たから、自分は話しかけた。今迄独言をいつて居た老爺は急に相手が出来たものだから、
「本当さ。なあ、天下の往還でえ、ぺらんめえ、何つてやがるだ」とやや声高に自分に云つた。
……それから、自分はぢき歩きだした。京橋の通りに出ても、実際だつたのか、それとも耳鳴りだつたのか、まだかすかに長唄の三味線が聞こえて居た。
底本:「日本の名随筆 別巻95 明治」作品社
1999(平成11)年1月25日第1刷発行
底本の親本:「木下杢太郎全集 第七巻」岩波書店
1981(昭和56)年6月
入力:浦山敦子
校正:noriko saito
2007年8月10日作成
青空文庫作成ファイル:
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