ご》。
シンフォニイの最後の拍子に連れて、序曲《プロロオグ》を唱う者登場する。そのうしろに炬火《たいまつ》を秉《と》る小厮《こもの》たち。
序曲を唱う者は一人の青年である。ヴェネチア風の装束、而《しか》も黒の喪服。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
序曲を唄う者 では音楽はおやめ下さい。これからわたくしの舞台です。わたくしには已《や》むに已まれぬ訴えが胸にあるのです。この若い時代から一味の滋液が流れてわたくしの心に入ります。そして斯人《このひと》、今わたくしを瞻《みは》っているこの立像の主《あるじ》は、嘗《かつ》て、わたくしのこの上もない心の友だったのです。陰惨事|繁《しげ》き今の時代には、その情《なさけ》はまた是非わたくしに必要なものであったのです。かの水精《ナイアス》の水したたる白い御手《おんて》に滋味を吸う鵠《こう》の鳥、水に浮くこの聖鳥の如くに、わたくしも亦《また》暗い時の間《ま》には、斯人の手にうち伏し、うち縋《すが》り、わが心の糧――深き夢をば求めました。ああ、わたくしにはあなたの像を、唯木の葉、花の枝で飾ることしか出来ないのですか?
前へ
次へ
全24ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ホーフマンスタール フーゴー・フォン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング