「夫子夫子と言ったとて、どれが一体汝のいう夫子やら俺《おれ》に分《わか》る訳がないではないか」と突堅貪《つっけんどん》に答え、子路の人態《にんてい》をじろりと眺めてから、「見受けたところ、四体を労せず実事に従わず空理空論に日を暮《く》らしている人らしいな。」と蔑《さげす》むように笑う。それから傍の畑に入りこちらを見返りもせずにせっせと[#「せっせと」に傍点]草を取り始めた。隠者《いんじゃ》の一人に違いないと子路は思って一揖《いちゆう》し、道に立って次の言葉を待った。老人は黙って一仕事してから道に出て来、子路を伴って己が家に導いた。既に日が暮れかかっていたのである。老人は※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]をつぶし黍《きび》を炊《かし》いで、もてなし、二人の子にも子路を引合せた。食後、いささかの濁酒《にごりざけ》に酔《よい》の廻《まわ》った老人は傍なる琴を執って弾じた。二人の子がそれに和して唱《うた》う。

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湛々《タンタン》タル露《ツユ》アリ
陽《ヒ》ニ非ザレバ晞《ヒ》ズ
厭々《エンエン》トシテ夜飲ス
酔ハズンバ帰ルコトナシ
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 明
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