学校友だちルイス・マノアールは、クレルヴァルがジュネーヴを離れてから後、いろいろ不しあわせな目に会いました。けれども、もう元気を取り戻して、とても陽気な美しいフランス婦人マダム・タウェルニエと、結婚なさる目あてでいらっしゃるという話です。その方は未亡人で、マノアールよりずっと年上ですけど、たいへん人に尊敬されていて、誰にでも人気があります。
 なつかしいヴィクトル、こうして書いているうちは元気でしたが、書き終えるとまたふたたび不安になってまいります。手紙をください、ヴィクトル。――一行でも――一語でも、私たちにはありがたいのです。アンリの御親切、御厚情、再三のお手紙には、お礼のことばもこざいません。衷心から感謝いたします。さよなら! ヴィクトル、お体には気をつけて。お願いですからお手紙をください!
[#地から2字上げ]エリザベート・ラヴェンザ
[#地から1字上げ]ジュネーヴ、一七××年三月十八日」
 この手紙を読んで私は叫んだ、「なつかしい、なつかしいエリザベート! さっそく手紙を書いて、みんなの感じている不安を一掃してあげなくちゃ……。」私は手紙を書いたが、ほねがおれてひどく疲れた。
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