の保護に託した。この出来事があってから二年後に、キャロリーヌは父の妻となったのだ。
私の両親の齢はだいぶ違っていたが、こういう事情はかえって、献身的な愛情のきずなで、いっそうこまやかに、二人を結びつけるように見えた。父のまっすぐな心のなかには正義感があって、そのために、強く愛することを大いによしとせずにはいられなかったのだ。おそらく父は、はじめ何年かは、晩年になってわかった親友の感心できない点に気を病み、またそれだけに、信頼のおける人間的値うちには、その分だけよけいに尊敬の念を寄せた。父の母に対する愛着には、老人の溺愛からとはてんで違う、感謝と尊敬のしるしがあった。というのは、それは、母の美徳に対する尊敬の念や、またある程度までは、母が堪えてきた悲しみを償うことにやくだちたいという願いから出たものであったからだが、そのために父の母に対するふるまいには、なんともいえない優しさがこもっていた。あらゆることが母の望みと便宜にかなうようにされた。庭師が異国のりっぱな植物を庇うように、父は母をあらゆる荒い風から庇い、母のおとなしい情深い心に楽しい感情をおこさせるものなら、なんでもそのまわりに取
前へ
次へ
全393ページ中35ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宍戸 儀一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング