「ジュスチーヌ・モリッツだつて! かわいそうに、あの子が嫌疑を受けたのだって? だけど、それはまちがっているよ。誰だってそんなことはわかっている。誰だって信じているわけではないね、エルネスト?」
「最初は誰も信じませんでしたよ。しかし、事情がいろいろわかってきて、どうやら信じないわけにいかないのです。それに、ジュスチーヌ自身のふるまいが、事実の証拠を固めるようにひどく混乱していて、疑問の余地のないのを、私は心配しているのですよ。だけど、今日、裁判がありますから、兄さんもあとですっかり傍聴してください。」
 弟の話によると、かわいそうなウィリアムの殺されたのがわかった朝、ジュスチーヌは、病気になって、数日間病床にひきこもっていた。そのあいだに、女中の一人が、殺人のおこなわれた夜ジュスチーヌが着ていたきものをふと調べてみると、そのポケットから私たちの母の画像が見つかったので、それに誘惑されて殺したものと判断された。その女中がさっそく、もう一人の女中にそれを見せたところ、その女中は家の誰にもひとことも言わずに、治安判事のところへ行ったので、その証拠にもとづいてジュスチーヌは逮捕されてしまった
前へ 次へ
全393ページ中122ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宍戸 儀一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング