、以前私を惹きつけた天与の快活さはずいぶん失われたが、そのやさしさと同情のこもったなごやかな顔のために、私のように枯れはてたみじめな者には、いっそうふさわしい伴侶になっていた。
 私かいま感じている平静は長く続かなかった。記憶には狂気が伴っていて、過ぎ去ったことを考えると、私はほんとうに気が狂った。荒れ狂って激しい怒りに燃えることがあるかとおもうと、すっかりふさぎこんで、しょんぼりとすることもあった。誰とも口をききもしなければ会いもせず、つぎつぎと自分をたたきのめす災難に戸惑いして、ただじっと坐っているのだった。 こういう発作から私を救い出す力があったのは、ただエリザベートだけで、そのやさしい声は激情に浮かされている私をなだめ、麻痺状態に沈んでいる私に人ごこちをつけてくれた。エリザベートは、私といっしょに、私のために泣いた。私か正気にかえると、私に忠告し、諦めさせようとほねおってもくれた。ああ、不幸な者にとっては、諦めるのもよいことだろう。しかし、罪を犯しに者には平和はない。悔恨に苦しみ悶えると、さもなければ、過度の悲しみにふけるさいに往々見られる悦びがだめになってしまうのだ。
 私が家に置いてからすぐ、父は私とエリザベートとの結婚式をさっそく挙げようと言いだした。私は黙っていた。
「それではおまえは、誰かほかに好きな人でもあるのかね?」
「そんなものはとこにもありませんよ。僕はエリザベートを愛しています。私たちがいっしょになるのを喜んで待っているのです。だから、日取りを決めてください。そうすればその日に、生死をかけて、あの子の幸福のために身を献げます。」
「ねえヴィクトル、そんな言いかたをするものじゃないよ。わたしらはひどい不運にみまわれたが、こうなるともう、あとに遺っている者にだけすがりついて、亡くなった者に対する愛情を、まだ生きている者に移そうじゃないか。わたしらの身うちは小さくなったが、愛情とおたがいの不運の絆でぴったり結ばれているのだよ。時の力がおまえの絶望を和らげてくれれば、新しく大事に世話してやる者が、わたしらから残酷に奪い去られた者に代って生れてくるだろうからね。」
 父が教えてくれたのは、そのようなことであった。しかし、私にはやはり、あの威嚇の憶い出が戻ってきた。あの悪鬼は、血を見ることにかけてはまだまだ万能だったので、それを私がほとんどどうにもな
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