ったが、入れかわりに父が入ってきた。
 このとき、父が来てくれたほど嬉しいことはなかった。そこで私は、手をさしのべて叫んだ、――
「それじゃ御無事でしたね、――エリザベートは――それからエルネストは?」
 父はみんな達者だといって私をおちつかせ、私の関心をもっていることを詳しく話して、私のげっそりした気分を引き立てて元気にしようとしたが、まもなく監獄というものに楽しく住めるわけがないと感じた。「おまえの住んでいる所は、まあなんとしたものだ!」と言って父は悲しげに、格子のはまった窓や部屋のあさましい様子を眺めた。「おまえは幸福を求める旅に出たのに、運命がおまえを追いまわしていると見えるね。それにしても、きのどくなクレルヴァルは――」
 運わるく殺された友人の名は、この弱りきった状態では、なかなか堪えられない刺戟であった。私は涙を流した。
「ああ! そうなんです、お父さん。何かしらひどく怖ろしい宿命が僕に迫っていて、それが終るまで僕は生きなくちゃならないのです。でなかったら、僕はきっとアンリの棺の上で死んでしまったはずですよ。」
 私たちは長く話しこむことを許されなかった。私の健康状態がまだ心配なので、安静を保つためにできるだけの用心が必要だったからだ。そこで、カーウィン氏が入って来て、無理をして力を出しきってはいけないと主張した。しかし、父が現われたことは、私には護り神が現われたようなもので、私はだんだん健康を恢復した。
 病気が治ると、私は、何ものも消すことのできない陰気な暗澹とした憂欝に浸るようになった。ぞっとするほど蒼ざめた、殺されたクレルヴァルのおもかげが、しじゅう眼の前にあった。こういう考えに興奮して危険なぶりかえしが来はすまいかとみんなが心配したことは、一再ならずあった。ああ! どうしてみんなが、こういったみじめでいやな生活をするのだろう。それは、きっと、今や終りに近づいている私の運命を満足させるためであった。まもなく、おお! まさにまもなく、死がこの脈搏を断って、屍になるまで私にのしかかる苦悶のたいへんな重みから、私を救ってくれ、そして正しい審判をおこなうことによって、私もまた安息にひたることができるだろう。そうなってほしいという思いが、いつも念頭を去らないのに、死の姿はいま遠のいてしまった。私はよく、何時間も身しろぎもせず、ものも言わずに腰かけて、私も
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