つのあとを追って、生きるか死ぬかの闘いをやらなかったのだろう。私は、あいつが立ち去るのを見のがし、あいつは本土を指して行ってしまった。私は、あいつの飽くなき復讐心に捧げられるつぎの犠牲者は誰だろう、と考えて身慄いした。また、それから、あいつの言ったことをふたたび考えてみた、――「おまえの結婚の夜には行くからな[#「おまえの結婚の夜には行くからな」に傍点]。」そうすると、それが、私の運命の満了と定められた期限なのだ。その時に私は死に、同時にあいつの悪意を満足させ消滅させることになるのだ。そういうことを考えても、恐ろしくてどうこうするわけではなかったが、ただ、愛するエリザベートのことを考えると――愛する者を自分の手から残酷にもぎとられた時の、その涙やはてしない悲しみのことを考えると――長いあいだ流したことのなかった涙が、私の眼から流れ出した。しかし、激しい格闘を演じないでは敵の前に倒れないぞと、決心した。
夜が明け放たれて、海上から陽が昇った。激しい怒りが絶望の底に沈潜するとさ、それが平静と呼ばれるかもしれないとしたら、私の気もちはかなり平静になった。昨夜の怖ろしい争いの場所である家を出て、海岸を歩いたが、海はほとんど私と人間仲間とのあいだの越えがたい障壁に見えた。いや、事実そういうことになってほしいものだと思った。なるほど退屈ではあるが、突然に不幸の打撃を蒙ることもなく、この不毛の岩の上で一生を過ごしたかった。もし帰るとすれば、自分が犠牲になるか、私のもっとも愛する者が私自身のつくった悪鬼につかまれて死ぬのを見るか、どちらかになるのであった。
私は、愛するすべての者から離れた、そしてその離れていることでみじめな思いをしている、おちつきのない幽霊のように、島を歩きまわった。正午になり、陽が高く昇ると、草の上に寝て、深い眠りに陥った。前夜、一睡もしていなかったので、神経が昂ぶり、眼が徹夜と苦悩のために充血したのだ。しかし、ぐっすり眠って元気が恢復したので、眼がさめると、やっと自分が、自分と同じ人間に属しているという気になり、ずっとおちついて今までのことを考えはじめたが、それでもまだ、悪鬼のことばが葬いの鐘のように耳のなかに鳴りひびき、それが、夢のようてもありながら、しかも現実として明白な、重たくのしかかるものに思われた。
太陽がずっと低くなったので、私は浜に坐りこみ
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