づいてみろ! おまえの頭にこの腕で叩きつける猛烈な仕返しがこわくないのか。行っちまえ、虫けらめ! 来るなら来てみろ、踏みつぶしてやるから! そしたら、いいか、おまえのみじめな存在を滅して、おまえにあんな非道な殺し方をされた被害者に、仕返しがしてやれるぞ!」
「こんなことだろうと思っていたよ。」と怪物が言った、「人間はみな、不幸なものを憎んでいる。どんな生きものよりもみじめなわたしが、憎まれなくちゃいけないわけだ! それなのに、わたしをつくったおまえさんが、二人のうちでどちらかが死ななけれは解けない結び目で結びあわされているこのわたしを、嫌って、はねつけている。わたしを殺すつもりでいる。命というものをこんなふうにおもちゃにしてどうするんです? わたしに対する義務を果してくださいよ。そうしたらわたしも、あんたやそのほかの人間に義務をはたしてやりますよ。わたしの条件に同意するなら、そいつらをそのままにしておいてあげましょう。しかしだね、あんたが拒絶するなら、まだ残っているあんたの身うちの者の血に飽きるまで、死神の胃袋をいっぱいにしてやりますぜ。」
「憎らしい怪けものめ! きさまは鬼だ! 地獄の拷問だって、おまえの犯罪の仕返しには甘すぎる。あさましい畜生め! 僕がつくったからと言ってきさまは責めるが、ではここに来い、うっかりしておまえにくれてやった火花を消してやるから。」
 私は怒りを抑えきれず、あらんかぎりの敵愾心に駆られて跳びかかった。
 あいてはわけもなく身をかわして言った、――
「おちつきなさい! わたしの呪われた頭に憎しみをぶっつける前に、わたしの言うことを聞いてもらいたいのだ。あんたがわたしをもっと不幸にしたがっているが、もういいかげん、苦しんだのじゃないかね。生きるということは、苦悩の積み重ねでしかないにしても、わたしには大事なものだから、それを守るのだよ。あんたがわたしを自分より強くこしらえたのを、おぼえていてください。わたしの身の丈はあんたよりも高いし、わたしの関節のほうがもっと強靱なのだ。けれども、あんたに敵対するつもりはありませんよ。わたしはあんたに造られたものだから、あんたのほうでもわたしに対する当然のやくめをはたすなら、わたしだって、わたしの生れながらの主君であり王であるあんたに対して、おとなしく、すなおにするつもりですよ。おお、フランケンシュタイ
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