烽オ地上にただ一人の人間しかいないとしたら、彼はすべての物を支配し得るであろう。けれども人は地上に一人ではない。地上にあるすべての人間は互《たがい》に相等しく人格であるから、同じ様に自らの目的を追求する責任を有し、自らの使命を実現する責任をもっている。これらすべての目的、これらすべての使命は互にそれぞれその処を得なければならぬ。そこに人格相互の間の権利と義務の相互関係の根源があるのである。
一九 これによって見ると、社会事実のうちに深い区別がなされなければならぬことが解る。一方自然力に対して働きかけた人間の意志と活動から来る所のもの、すなわち人格と物との関係を区別せねばならぬ。他方他人の意志または活動に対して働く人の意志または活動から来る所のもの、すなわち人格と人格との関係を区別せねばならぬ。これら二つの範疇の事実の法則は本質的に異る。自然力に対して働く人間の意志の目的、人格と物との関係の目的は、物の目的を人格の目的に従属せしめるにある。他人の意志の領域に影響を及ぼす人間の意志の目的、人格と人格との目的は、人の使命の相互の調整にある。
故に、おそらく便利であろうと思われるが、私はこ
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