からかかる競争状態において生ずる交換価値を研究しようとする。一般に経済学者は、例外的な事情の下に現われるような交換のみを研究しようとする。彼らはダイヤモンドや、ラファエルの絵画、流行の音楽会のみを研究する。ジョン・スチュアート・ミルの引用によれば、ド・クィンシー(De Quincey)氏は、汽船に乗ってスーペリオール湖(〔Lac Supe'rieur〕)を旅行する二人を想像する。一人は楽器を所有し、他の一人は「文明から八百|哩《マイル》も遠ざかっている無人の地への移住の途中であり」、ロンドンを出発するに際し楽器を購うのを忘れたのであった。この人にとって楽器は心の不安を和《やわら》げる神秘な力をもっている。下船しようとするとき、この人は他の一人が所有する楽器を六〇ギニーの価格で購ったという。もちろん理論はかかる特殊な場合をも考えねばならない。市場に行われる一般的法則は、ダイヤモンドの市場にも、ラファエルの絵画の市場にも、楽器の市場にも適用せられねばならない。それはまたクィンシーが考えたような一人の売手と一人の買手と一箇の物と一瞬間とから成る市場にも適用せられねばならない。しかし論理的には
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