認めた。それは、社会がその収入の消費に対する超過部分を種々に配分して種々に資本化するに当り、新資本用役の有効利用の最大を目的として、この資本の量を決定しようとするときに現われる問題、すなわち、私が新資本の最大利用の問題と呼び、数学的には資本の稀少性がこの資本の価格に比例せねばならぬことによって解かれる問題である。だから用役の価格と資本の価格とが比例することにより二つの最大が生ずるのであるが、この用役の価格と資本の価格とが比例することは、一の留保の下に、まさしく自由競争によって生ずる結果なのである。
しかしながら、一八七六年以後一八九九年に至る私の研究によって著しく変化せられたのは特に貨幣理論である(七)[#「(七)」は行右小書き]。第一並びに第二版においては、貨幣編は純理論と応用論との二部から成っていたが、第三、第四版においては、応用論が除かれ、従って純理論、特に貨幣理論の根本である貨幣価値の問題の解法しか研究しなかった。第一版ではこの解法は、私が一般の経済学者から借りてきた「流通に役立った現金」(〔circulation a` desservir〕)の思想を基礎としている。第二版においてはこの解法は、拙著(〔The'orie de la monnaie〕)に用いられた「所望の現金」(〔encaisse de'sire'e〕)(訳者註)[#「(訳者註)」は行右小書き]の思想を基礎としている。だがこの第二版においても第三版においても、第一版におけるように、別に私は貨幣の需要供給の均等方程式を経験的に立てた。この第四版ではそれは、流動資本の需要供給の均等方程式と共に、交換方程式及び最大満足の方程式から理論的に演繹せられている。このようにして流通及び貨幣の理論は、交換の理論、生産の理論、資本化の理論、信用の理論のように、それに相応するシステムの方程式の定立と解法とを含むのである。そしてこの流通論を組成する六章は、純粋経済学の大きな問題の第四である所の流通の問題の解法を示したものである。
私は、これら四つの問題の関連を明らかにするため、章編の数、順序、表題に少しく変更を加えた。ことに流通理論を資本化の理論の直後に置き、その次に一編を設け、経済的進歩の研究及び純粋経済学のシステムの研究をこの中に入れた。また限界生産力説すなわち問題の所与としてではなく未知数と考えられた製造係数の決定理論をも、この編の中に加えた。
これらの変化の結果として、本書の概要は次の如くなった。
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純粋経済学要論すなわち社会的富の理論
第一編 経済学及び社会経済学の対象と分け方――第二編 二商品相互の間の交換の理論――第三編 多数の商品相互の間の交換の理論――第四編 生産の理論――第五編 資本化及び信用の理論――第六編 流通及び貨幣の理論――第七編 経済的進歩の条件と結果、純粋経済学のシステムの批評――第八編 公定価格・独占・租税について
附録第一 価格決定の幾何学的理論
附録第二 アウスピッツ氏とリーベン氏の価格理論の原理についての考察
[#ここで字下げ終わり]
この版はかく変化せられてはいるけれども、先にいったように一八七四年―一八七七年のものの最終版に過ぎない。かくいう意味は、私の今の学説が、数学者にして同時に経済学者であった少数の人々が解してくれたような私の原《もと》の学説と全く同一であるということにある。私の学説は次のように要約し得られる。
純粋経済学は、本質的には、絶対的自由競争を仮定した制度の下における価格決定の理論である(八)[#「(八)」は行右小書き]。稀少であるために、すなわち利用があると共に限られた量しかないために、価格をもつことの出来る有形無形の一切の物の総体は、社会的富を構成する。純粋経済学がまた社会的富の理論であるゆえんはここにある。
社会的富を組成する物のうちに、一回以上役立つ物すなわち資本または持続財と、一回しか役立たない物すなわち収入または消耗財(biens fongibles)とを区別せねばならぬ。資本は土地、人的能力及び狭義の資本を含む。収入は第一に消費の目的物及び原料を含む。これらは多くの場合有形の物である。次に収入はいわゆる用役(services)すなわち資本の継続的使用を含む。これらの用役は多くの場合無形のものである。資本の用役で直接的利用を有するものは、消費的用役(services consommables)と称せられ、消費目的物に結合する。間接的利用しかもたない資本の用役は、生産的用役(services producteurs)と称せられ、原料と結合する。私は、ここにこそ純粋経済学全体の鍵があると思う。もし資本と収入との区別を看過し、あるいはことに、社会的富のうちに有形の収入と併《なら》
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