硯箱と時計
沖野岩三郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)石之助《いしのすけ》が
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)早速|其《そ》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)おふとん[#「ふとん」に傍点]
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石之助《いしのすけ》が机にむかつて、算術をかんがへてゐますと、となりの金《きん》さんが来て、
「佐太《さだ》さん。石さんはよく勉強するね。きつと硯箱《すずりばこ》になりますよ。」と、言ひました。すると佐太夫は、
「いいえ。石之助はとても硯箱にはなれませんよ。硯箱になるのは、あんたの所の茂丸《しげまる》さんですよ。」と、申しました。
ふすまのこちらで、お父さまと金さんの話をきいてゐた石之助は、へんなことをいふものだなあと思ひました。
しばらくして、金さんが帰つたので、石之助はすぐ、お父さまの所へ行つて、
「僕《ぼく》が、硯箱になれないつて、何の事ですか。」と、きいてみました。
石之助が、あまり不思議さうな顔をしてゐるので、お父さまは、ひざをたたいて笑ひながら、
「狸《たぬき》が茶釜《ちやがま》になつた
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