ちは、東山派と西山派とに分れて、手手《てんで》に、旗を押し立てて、学校の運動場へのりこみました。東山派の、今雄さんびいきの人たちは、赤い旗を、西山派の、京一さん組の人たちは、白い旗を造りました。そして、源氏と平家のやうに東と西とに分れて、応援をする事になりました。
運動会の競技は、段段と進んで、いよいよ最後の、二百めえとる競走になりました。
東の方では、生徒の父兄達が、赤い旗を振つて、
「たたいても、こはれない方、しつかりしろ。」と、叫びますと、西の方では、
「投げても、こはれない方、しつかりしろ。」と、叫びつづけました。
けれども競技の結果は、京一さんが一足程早く、決勝点へ入つたので、
「投げても、こはれない方万歳。」の、こゑが、西の方から起りました。すると東山の方から、
「今一度やり直せ。不公平だ。」
と、叫ぶこゑが起りました。そこで校長さんは、
「番外として、も一度二百めえとる競走をいたします。」
と、呼びました。
「たたいても、こはれない方、しつかりしろ。」
「投げても、こはれない方、しつかりしろ。」
東西から起るこゑは、雷のやうでした。ところが今度は、今雄さんの方が、二足ばかり早く、決勝点に入りました。
今度は東の方から、しきりに、
「たたいても、こはれない方万歳。」を、くりかへして叫びました。けれども、今雄さんと京一さんは、にこにこ笑ひながら、手をにぎつて別れました。
ごん七さんは、瓦がよく売れるので、お金がうんとたまりました。で、東山の景色のいいところへ、立派な二階造りの家《うち》を建てました。
ごん八さんは、それを見て、西山の景色のいい所へ、三階造りをたてました。
ごん七さんは、まけてはならないと思つて、二階の上に、また一階をたてそへました。
ごん八さんは、三階の上に、また一階をたてそへました。
ごん七さんも、三階を四階にしました。
ごん八さんは、とても大きな鬼瓦を作つて、四階の屋根の上にのせました。その鬼は、恐ろしいかほで、ごん七さんのおうちの方を、朝も晩も、にらみつけてゐます。
ごん七さんも、まけぬ気になつて、もつと大きな鬼瓦を作つて、四階の上にのせました。それは世にもめづらしい、恐ろしい、かほつきの鬼瓦でした。それが、朝も晩も、西山の鬼瓦を、にらみつけてゐます。
今雄さんと京一さんとは、相かはらず、仲よく遊んでゐ
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