ろはどうしても淡水の湖としか見えぬ。遙かの白帆は極めてゆるい速度を以ていくらかづゝ入江の口の方へ動きつゝある。然し白帆は帆の力で動くのでなくて入江の一方が僅かに傾きかけたので水が平均を保たうとしてこけて行く。其水に隨つて動いて行くのだと思ふ程ゆるい速度である。こちらの岸のひた/\水には瓜の白い皮がそつちにもこつちにも散らばつた。さうして余が手の白甜瓜は盡きた。余は荷物を肩にして立ちあがる。又對岸を見ると白帆は横を向いたものか二つとも白糸のやうに細くなつて居た。
[#地から1字上げ](明治四十一年三月一日發行、アカネ 第壹卷第貳號所載)
底本:「長塚節全集 第二巻」春陽堂書店
1977(昭和52)年1月31日発行
入力:林 幸雄
校正:今井忠夫
2000年5月10日作成
青空文庫作成ファイル:
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