け》へ鹽《しほ》を振《ふ》つては青菜《あをな》を足《あし》でぎり/\と蹂《ふ》みつけて又《また》鹽《しほ》を振《ふ》つては蹂《ふ》みつける。お品《しな》は鹽《しほ》の加減《かげん》やら何《なに》やら先刻《さつき》から頻《しき》りに口《くち》を出《だ》して居《ゐ》る。勘次《かんじ》はお品《しな》のいふ通《とほ》りに運《はこ》んで居《ゐ》る。
 お品《しな》は起《お》きて居《ゐ》ても別《べつ》に疲《つか》れもしないのでそつと草履《ざうり》を穿《は》いて後《うしろ》の戸口《とぐち》から出《で》て楢《なら》の木《き》へ引《ひ》つ張《ぱ》つた干菜《ほしな》を見《み》た。それから林《はやし》を斜《なゝめ》に田《た》の端《はた》へおりて又《また》牛胡頽子《うしぐみ》の側《そば》に立《た》つて其處《そこ》をそつと踏《ふ》み固《かた》めた。それから暫《しばら》く周圍《あたり》を見《み》て立《た》つて居《ゐ》た。お品《しな》は庭先《にはさき》から喚《よ》ぶ勘次《かんじ》の大《おほ》きな聲《こゑ》を聞《き》いた。竹《たけ》や木《き》の幹《みき》に手《て》を掛《か》けながら斜《なゝ》めに林《はやし》をのぼつて
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