か》に土手《どて》の往來《わうらい》へ出《で》た。霧《きり》が一|遍《ぺん》に晴《は》れた。彼《かれ》は何《なに》かに騙《だま》された後《あと》のやうに空洞《からり》とした周圍《しうゐ》をぐるりと見廻《みまは》さない譯《わけ》にはいかなかつた。彼《かれ》は沿岸《えんがん》の洪水後《こうずゐじ》の變化《へんくわ》に驚愕《おどろき》の目《め》を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》つた。偶然《ひよつと》彼《かれ》は俄《にはか》に透明《とうめい》に成《な》つた空氣《くうき》の中《なか》から驅《かけ》つて來《き》て網膜《まうまく》の底《そこ》にひつゝいたものゝやうにぽつちりと一つ目《め》についたものがある。それは遠《とほ》い上流《じやうりう》に繋《かゝ》つて居《ゐ》る小《ちひ》さな船《ふね》であつた。
 其處《そこ》には數本《すうほん》の竹竿《たけざを》が立《た》てられてあるのも同時《どうじ》に彼《かれ》の目《め》に入《い》つた。彼《かれ》は直《す》ぐにそれが鮭捕船《さけとりぶね》であることを知《し》つた。漁夫《ぎよふ》は鮭《さけ》が深夜《しんや》に網《あみ》に懸《かゝ》るのを待《
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