勢《おほぜい》の中《うち》から切《き》り出《だ》したものがあつた。葦《あし》の葉末《はずゑ》が微風《びふう》にも靡《なび》けられる樣《やう》に此《この》一|語《ご》の爲《ため》に皆《みな》ぞよ/\と復《また》騷《さわ》いだ。群集《ぐんしふ》の中《うち》にはおつぎも交《まじ》つて居《ゐ》た。若《わか》い衆等《しゆら》は先刻《さつき》からそれに注目《ちうもく》して居《ゐ》たが
「どうした、彼奴等《あいつら》こと寄《よ》せてんべぢやねえか」
「おつぎこと出《だ》してんべぢやねえか」彼等《かれら》はひそ/\と竊《ひそか》に喋《しめ》し合《あは》せた。
「寄《よ》せてんべえと」群集《ぐんしふ》の後《うしろ》の方《はう》から呶鳴《どな》つた。
「そんぢや此方《こつち》へ出《で》さつせえな」店《みせ》の女房《にようばう》はいつた。群集《ぐんしふ》は一|時《じ》に威勢《ゐせい》がついて巫女《くちよせ》の膝《ひざ》近《ちか》くまでぎつしりと座敷《ざしき》を塞《ふさ》いだ。勘次《かんじ》もおつぎも座敷《ざしき》に窮屈《きうくつ》な居《ゐ》ずまひをして居《ゐ》た。店《みせ》の女房《にようばう》は少《すこ》し
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