《なへたば》へ徳利《とくり》から少《すこ》し酒《さけ》を注《つ》いだ。
「酒《さけ》そつちの方《はう》へたんと掛《か》けねえで貰《も》れえてえな」兼《かね》博勞《ばくらう》はけろりとした容子《ようす》をして戯談《じやうだん》をいつた。
「酒《さけ》飮《の》む者《も》な、さうだに惜《を》しいもんだんべか」おつぎはこつそりいつた。
「そんだつて酒《さけ》つちや人《ひと》の口《くち》さ入《せ》える樣《やう》に出來《でき》てんだから、それ證據《しようこ》にや俺《お》らが口《くち》さ入《せ》えりやすぐ利《き》くから見《み》ろえ」兼《かね》博勞《ばくらう》はいつた。亭主《ていしゆ》は又《また》苗束《なへたば》へ香煎《かうせん》を少《すこ》し振《ふ》り掛《か》けた。それは稻《いね》の花《はな》に模擬《なぞら》つたので、稻《いね》の花《はな》が一|杯《ぱい》に開《ひら》く樣《やう》との縁起《えんぎ》であつた。兼《かね》博勞《ばくらう》は其《そ》れを見《み》て急《きふ》に土間《どま》へ下《お》りて行《い》つた。
「どうれ、おめえ等《ら》饂飩粉《うどんこな》少《ちつ》と持《も》つて來《き》て見《み》せえ、
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