るだけ喧《やかま》しく只《たゞ》がしや/\と鳴《な》く。がしや/\が鳴《な》き出《だ》せば彼等《かれら》は安《やす》んじて雨戸《あまど》をこじるのである。それから又《また》箱《はこ》を轉《ころが》したやうな、隔《へだ》ての障子《しやうじ》さへ無《な》い小《ちひ》さな家《いへ》で女《をんな》が男《をとこ》を導《みちび》くとて、如何《どう》しても父母《ちゝはゝ》の枕元《まくらもと》を過《す》ぎねば成《な》らぬ時《とき》は、踏《ふ》めばぎし/\と鳴《な》る床板《ゆかいた》に二人《ふたり》の足音《あしおと》を憚《はゞか》つて女《をんな》は闇《やみ》に男《をとこ》を脊負《せお》ふのである。其處《そこ》には假令《たとへ》重量《ぢゆうりやう》が加《くは》へられても、それは巧《たくみ》に疲《つか》れて眠《ねむ》い父母《ちゝはゝ》の耳《みゝ》を欺《あざむ》くのである。
 一|般《ぱん》の子女《しぢよ》の境涯《きやうがい》は如此《かくのごとく》にして稀《まれ》には痛《いた》く叱《しか》られることもあつて其《その》時《とき》のみは萎《しを》れても明日《あす》は忽《たちま》ち以前《いぜん》に還《かへ》つて其《
前へ 次へ
全956ページ中369ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング