たので聲《こゑ》は低《ひく》かつたが、それでも漸々《だん/\》に勢《いきほ》ひを加《くは》へて居《ゐ》た。
「俺《お》ら白《しれ》え藥《くすり》貼《は》つたんだぞ」與吉《よきち》は先刻《さつき》から油《あぶら》を塗《ぬ》つた卯平《うへい》の瘡痍《きず》に目《め》を注《そゝ》いで居《ゐ》てかう突然《とつぜん》にいつた。
「なあに、さうだ物《もん》なんざ貼《は》んねえツたつて汝《わ》ツ等《ら》がよりやこつちの方《はう》が早《はや》く癒《なほ》つから」小柄《こがら》な爺《ぢい》さんは暫《しばら》く手《て》もとへ置《お》いた油《あぶら》の皿《さら》を再《ふたゝ》び佛壇《ぶつだん》の隅《すみ》へ藏《しま》つた。
「そんでも俺《お》れこたはあ、來《き》なくつても癒《なほ》つからえゝつて藥《くすり》よこしたんだぞ」與吉《よきち》は少《すこ》し間《あひだ》を隔《へだ》てゝ怖《お》づ/\いつた。
「癒《なほ》るもんかえ、汝等《わツら》が」小柄《こがら》な爺《ぢい》さんは揶揄《からか》ふやうにして呶鳴《どな》つた。
「癒《なほ》らあえ、そんだつて痛《いた》かねえ俺《お》ツ等《ら》」與吉《よきち》は驚《おどろ》いたやうにいつた。
「其《そ》の白《しれ》え藥《くすり》だツちのよこしたのか」卯平《うへい》は微《かす》かな聲《こゑ》で聞《き》いた。
「さうなんだわ」
「汝《わ》りや、それ※[#「姉」の正字、「女+※[#第3水準1−85−57]のつくり」、394−15]《ねえ》にでも貼《は》つてもらあのか」
「俺《お》ら貼《は》んねえ」
「そんぢや藥《くすり》はどうしたんでえ、汝《わ》りやあ」
「おとつゝあ持《も》つてんだから俺《お》ら知《し》んねえ」與吉《よきち》は上《あが》り框《がまち》に胸《むね》を持《も》たせて下駄《げた》の爪先《つまさき》で土間《どま》の土《つち》を叩《たゝ》きながら卯平《うへい》と斯《か》うして數語《すうご》を交換《かうくわん》した時《とき》
「えゝからそんな藥《くすり》なんぞのこと構《かめ》えたてんなえ、此《こ》れで癒《なほ》つから」と小柄《こがら》な爺《ぢい》さんは傍《そば》から打《う》ち消《け》した。
「乞食野郎奴《こちきやらうめ》、汝《わ》ツ等《ら》が親爺《おやぢ》は見《み》やがれ、汝《われ》こた醫者《いしや》さ連《つ》れてく錢《ぜに》持《も》つてけつかつて、
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