に村落《むら》の者《もの》は手當《てあた》り次第《しだい》に家財《かざい》を持《も》つて其《そ》れを安全《あんぜん》の地位《ちゐ》に移《うつ》した。其《そ》の點《てん》に於《おい》て白晝《はくちう》の動作《どうさ》は敏活《びんくわつ》で且《か》つ容易《ようい》であつた。家財道具《かざいだうぐ》が門《もん》の外《そと》に運《はこ》ばれた時《とき》火勢《くわせい》は既《すで》に凡《すべ》ての物《もの》の近《ちか》づくことを許容《ゆる》さなかつた。家《いへ》を圍《かこ》んで東《ひがし》にも杉《すぎ》の喬木《けうぼく》が立《た》つて居《ゐ》た。森《もり》の梢《こずゑ》の上《うへ》に遙《はるか》に立《た》ち騰《のぼ》らうとして次第《しだい》に其《そ》の勢《いきほ》ひを加《くは》へる焔《ほのほ》を、疾風《しつぷう》はぐるりと包《つゝ》んだ喬木《けうぼく》の梢《こずゑ》からごうつと壓《お》しつけ壓《お》しつけ吹《ふ》き落《お》ちた。焔《ほのほ》は斜《なゝめ》にさうして傾《かたむ》きつゝ、群集《ぐんしふ》の耳《みゝ》には疾風《しつぷう》の響《ひゞき》を奪《うば》つて轟々《ぐわう/\》と鳴《な》り續《つづ》いた。吹《ふ》き落《おと》す疾風《しつぷう》に抵抗《ていこう》して其《そ》の力《ちから》を逞《たくま》しくしようとする焔《ほのほ》は深《ふか》く木材《もくざい》の心部《しんぶ》にまで確乎《しつか》と爪《つめ》を引《ひ》つ掛《か》けた。さうして其《そ》の焔《ほのほ》は近《ちか》く聳《そび》えた杉《すぎ》の梢《こずゑ》から枝《えだ》へ掛《か》けて爪先《つまさき》で引《ひ》つ掻《か》いた。其《そ》の度《たび》に杉《すぎ》は針葉樹《しんえふじゆ》の特色《とくしよく》を現《あらは》して樹脂《やに》多《おほ》い葉《は》がばり/\と凄《すさま》じく鳴《な》つて燒《や》けた。屋根裏《やねうら》の竹《たけ》が爆破《ばくは》した。消防《せうばう》の群集《ぐんしふ》は殆《ほと》んど皮膚《ひふ》を燒《や》かれるやうな熱《あつ》さを怖《おそ》れて段々《だん/\》遠《とほ》ざかつた。小《ちひ》さな喞筒《ポンプ》は其《その》熾《さかん》な焔《ほのほ》の前《まへ》に只《ただ》一|條《でう》の細《ほそ》い短《みじか》い彎曲《わんきよく》した白《しろ》い線《せん》を描《ゑが》くのみで何《なん》の功果《こうくわ》も見《
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