鋏《はさみ》で白紙《はくし》を刻《きざ》んで、眞鍮《しんちう》の箆《へら》で其《その》藥《くすり》を紙《かみ》へ塗抹《ぬ》つて患部《くわんぶ》へ貼《は》つてやつた。怪我人等《けがにんら》は只《たゞ》凝然《ぢつ》として醫者《いしや》の熟練《じゆくれん》した手《て》もとを凝視《ぎようし》した。勘次《かんじ》は他人《ひと》の後《うしろ》から爪立《つまだて》をした。二三|人《にん》小《ちひ》さな療治《れうぢ》が濟《す》んで十二三の男《をとこ》の子《こ》が仕事衣《しごとぎ》の儘《まゝ》な二十四五の百姓《ひやくしやう》に負《お》はれて醫者《いしや》の前《まへ》に据《す》ゑられた。醫者《いしや》は縁側《えんがは》の明《あか》るみへ座蒲團《ざぶとん》を敷《し》いて出《で》た。怪我人《けがにん》は醫者《いしや》の前《まへ》へ出《で》ると恐怖《きようふ》に襲《おそ》はれたやうに俄《にはか》に鳴咽《をえつ》した。醫者《いしや》は横《よこ》に膨《ふく》れた大《おほき》な身體《からだ》でゆつたりと胡坐《あぐら》をかいた儘《まゝ》怪我人《けがにん》の左《ひだり》の手《て》を捲《まく》つて見《み》た。怪我人《けがにん》の上膊《じやうはく》が挫折《ざせつ》してぶらりと垂《た》れて居《ゐ》た。醫者《いしや》は怪我人《けがにん》の患部《くわんぶ》に手《て》を觸《ふ》れて見《み》て
「お前《まへ》そつち持《も》つて」と簡單《かんたん》に顎《あご》で百姓《ひやくしやう》へ指圖《さしづ》した。百姓《ひやくしやう》は怖《お》づ/\怪我人《けがにん》の後《うしろ》へ廻《まは》つて蒼《あを》い顏《かほ》をして抱《だ》いた。
「えゝか、ぎつと抱《だ》いてるんだぞ」醫者《いしや》は足《あし》を怪我人《けがにん》の腹部《ふくぶ》に當《あ》てゝ兩手《りやうて》に挫折《ざせつ》した手《て》を持《も》つて曳《ひ》かうとした。怪我人《けがにん》は恐《おそ》ろしさにわつと聲《こゑ》を放《はな》つて泣《な》いた。醫者《いしや》は手《て》を止《と》めた。
「お前《まへ》兄貴《あにき》だな、そんぢやえゝ、徒勞《むだ》だ」と抱《だ》いた手《て》を放《はな》たしめた。百姓《ひやくしやう》は骨肉《こつにく》の勦《いたは》りが泣《な》き號《さけ》ぶ子《こ》をぎつと力《ちから》を籠《こ》めて曳《ひ》かせない。そんな思《おも》ひきつた手段《しゆだ
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