かいた》が白《しら》つ黴《かび》に成《な》つちやつて此《こ》れがまだなか/\干《ひ》ねえから疊《たゝみ》なんざ何時《いつ》敷《し》つ込《こ》めるもんだか分《わか》んねえのさ、そんでまた田《た》でも畑《はたけ》でも引《ひ》つ被《かぶ》つた處《とこ》は水《みづ》干《ひ》てから腐《くさ》つてるもんだから其《そ》の臭《くせ》えことが又《また》噺《はなし》にやなんねえや、俺《お》ら作物《さくもつ》ばかし困《こま》んだと思《おも》つたら、畑《はたけ》の桐《きり》の木《き》でも樫《かし》の木《き》でも今《いま》ん成《な》つてからぼろ/\葉々《はつぱ》が落《おつ》こつちやつて可怖《おつかね》えもんだよ」おつたはいひながら風呂敷《ふろしき》を解《と》いた。やまと煮《に》と書《か》いた牛肉《ぎうにく》の鑵詰《くわんづめ》が三|本《ぼん》と菓子《くわし》でもあるかと思《おも》ふ小《ちひ》さな紙包《かみづゝみ》の堅《かた》めた食鹽《しよくえん》の四つ五つとが出《で》た。
「此《こ》れなあ、そんでも難有《ありがて》えことに、水浸《みづびたし》に成《な》つた家《いへ》さは役場《やくば》から一軒毎《えつけんごめら》に下《さ》げ渡《わた》しになつたんだよ、俺《お》らまたこつちの家《うち》なんぞぢやどうえ鹽梅《あんべえ》だと思《おも》つて暫《しばら》く外《ほか》へも出《で》たことねえもんだから出《で》ても見《み》てえし、かうえ物《もの》自分《じぶん》でばかし口《くち》開《あ》けつちやあのも何《なん》だと思《おも》つて持《もつ》て來《き》て見《み》たのよ、俺《お》ら一《ひと》つ手《てえ》つけて見《み》たが何程《なんぼ》えゝ味《あぢ》のもんだか知《し》んねえや」おつたは空《から》になつたかなり大《おほ》きな風呂敷《ふろしき》を幾《いく》つかに折《を》つた。
「おゝえや、たえしたもんだね、此《こ》れ鹽《しほ》だんべけまあ、見《み》てえたつて見《み》らつるもんぢやねえよ、かうえ物《もの》あねえ、能《よ》くまあ持《も》つて來《き》て勘次《かんじ》さん此《こ》ら大變《たいへん》だ」
 南《みなみ》の女房《にようばう》は食鹽《しよくえん》の一|箇《こ》を手《て》にして見《み》ながら羨《うらや》ましげにいつた。おつぎも珍《めづ》らし相《さう》にして南《みなみ》の女房《にようばう》の手《て》を覗《のぞ》いた。勘次《か
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