かんじ》は庭《には》から偸《ぬす》むやうに視《み》ては卯平《うへい》がおつたへ威勢《ゐせい》をつけて居《ゐ》るやうに思《おも》つた。彼《かれ》は解《と》いて打《う》つて更《さら》に藁《わら》で括《くゝ》つた蕎麥《そば》の束《たば》をどさりと遠《とほ》くへ擲《はふ》つた。葉《は》が更《さら》にぐつたりと萎《しを》れた鳳仙花《ほうせんくわ》の枝《えだ》がすかりと裂《さけ》て先《さき》が地《ち》についた。
「※[#「姉」の正字、「女+※[#第3水準1−85−57]のつくり」、292−2]等《あねら》、大層《たえそ》なこと云《ゆ》つたつて、老人《としより》の面倒《めんだう》見《み》たゝ云《ゆ》へめえ」勘次《かんじ》はぶつ/\と獨語《どくご》した。おつたの耳《みゝ》にも微《かす》かにそれが聞《きこ》えた。おつたは屹《きつ》と見《み》た。
「おとつゝあ默《だま》つてるもんだ」おつぎは輕《かる》く勘次《かんじ》を制《せい》して
「お晝餐《ひる》だぞはあ」とおつぎは更《さら》に勘次《かんじ》へ注意《ちうい》した。
「そんぢやこつちのおとつゝあん、お八釜敷《やかまし》がした、わしや歸《けえ》りませうはあ、一|刻《こく》も居《ゐ》ちや邪魔《じやま》でがせうから、こつちのおとつゝあんも邪魔《じやま》に成《な》んねえ方《はう》がようがすよねえ」おつたは洋傘《かさ》を開《ひら》いて
「岡目《をかめ》でも知《し》れまさあねえ、假令《たとひ》どうでも俵《たはら》まで持《も》つてられて、辨償《まよ》つて見《み》た處《ところ》で三十|錢《せん》か五十|錢《せん》のことだんべぢやねえか、出來《でき》るも出來《でき》ねえもあるもんぢやねえ」とおつたは忌々敷《いま/\し》さに其《そ》の口《くち》を止《と》めなかつた。
「お晝餐《ひる》はどうでがすね」おつぎはそれでも怖《お》づ/\おつたへいつた。
「俺《お》ら、はあ要《え》らねえともね」おつたは蕎麥《そば》の種子《み》の一|杯《ぱい》に散《ち》らけた庭《には》を遠慮《ゑんりよ》もなく一|直線《ちよくせん》に不駄《げた》の跡《あと》をつけた。
「勘次等《かんじら》、親子《おやこ》仲《なか》よくつてよかんべ、世間《せけん》の聞《きこ》えも立派《りつぱ》だあ、親身《しんみ》のもなあ、お蔭《かげ》で肩身《かたみ》が廣《ひろ》くつてえゝや」おつたは庭《には》の出口《
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