人なみ、我たち掃く劉單子劉單子、箒伐り木を伐り持ちこ。掻き掃きて川にながさむ、ながさむを見に來。

     旅順

をぢなきや嚢の鼠、ふくろこそ噛みてもやれめ、そびらには矛迫め來、おもてには潮沫湧く、穴ごもり隱らむすべも、術なしにあはれ。

     韓國

栲衾新羅の埼の、あまり埼、いひき持ち來、悉に引かざりしかば、常たえずさへぐ韓國。ことなぎむいま。

     樺太

阿倍比羅夫楯つきなめ、艤ひゆきしかばふと、鰭つ物いむれてあれど、我獲ねば人とりき。いまよりは海の眞幸も、我欲りのまゝ。

     雜咏十六首

足曳のやつ田のくろの揚げ土にほろ/\落る楢の木の花

鋸の齒なす諸葉の眞中ゆもつら抽きたてるたむぽゝの花

春の田を耕し人のゆきかひに泥にまみれし鼠麹草《はゝこくさ》の花

うつばりの鼠の耳に似たる葉のたぐひ宜しきその耳菜草

あら鋤田のくろの杉菜におひまじり黄色にさけるつる苦菜《にがな》の花

鍋につく炭掻きもちてこゝと塗りたれ戯れのそら豆の花

春雨の洗へど去らずそら豆のうらわか莢の尻につくもの

筑波嶺のたをりの路のくさ群に白くさきたる一りむさうの花

藪陰のおど
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