んとすれば其光きえぬ
星
國原はやみの夜空におほはれて星あきらかに天の川流る
山かげの桃の林に星落ちてくはし少女は生れけむかも
ぬば玉の闇の夜空に尾をひきて遠津海原ほしとびわたる
瀧
うちわたす二つの瀧の下つせの落合の瀬は木深み見えず
二荒のふもとをゆけば野のきはみ山あひにして瀧かゝるみゆ
二荒の山のつゞきの山もとにたぎつ七たき七つなみおつ
あしひきの山の夕立風あれて瀧のとゞろの音もきこえず
杉の木のしみたつ山の山おくの雲わくところたきおちとよむ
星
久方のみ空を雲のゆきかひに見えみ見えずみ星うつる水
或日人の家にて朝顏を見てよめる
松をうゑ茄子をつくるかたはらに朝顔はひて垣にからめり
朝顔と葡萄の棚とあひならび葡萄の蔓に朝顔からむ
もとあらの棚に這はせし朝顔のいや長蔓のしげりはびこる
この庭の朝顔きりてつなげらばさき村ゆきて木にからむべし
棚にしてからむ朝顔その蔓のたれしところに莟ふくれつ
萩
萩の花ぬける白玉ともしけど露にしあればとりがてにすも
ひまあらの垣にしげれる白萩のしら/\見えて夕月のぼる
萩の上に雀とまりて枝ゆれて花はら/\と石にこぼるゝ
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雲の上のよろこびごときのふとのみおもひはべりしにはや御着帶の事きこえはべれば
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むらさきの花をつくりていはひてし月の六かはり秋ふけわたる
神ながら契らす秋の長秋をみこのきさいに玉こもります
すめろぎのみすゑさかゆく大みよに天なる神は玉くだします
こもらせる玉をたふとみやすらかにあらせたまへといのりたてまつる
をにませば日のすゑとほぎめにませば月のすゑとほぐ玉にいますはや
天なるや神のくだせるうづの玉をことほぎまつることのかしこさ
かゞなべて五つのおよび二をりの十かはり月日さきくといのる
こもらせる玉をかしこと山川の清き河内に宮居せすかも
かしこきや玉くだらせる國原にかゞよふ雲の八重たちのぼる
國原に玉くだらせるしるしありてとよの長秋ながくやすらかに
天にまし國にいませるもろ/\の神のまもらす玉のたふとさ
鬼
窓の外にうかゞふ鬼の隱るゝとかしら隱して角を隱さず
なにをかもいたく恐れか赤鬼のおもてか青にうちふるひ居り
戯詠鬼歌
葱のぬたを好む
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