そこで、つぎの手紙を私に手渡した。それは私のエリザベートから来たものであった。――
「なつかしいヴィクトル――かげんがずいぶんおわるかったのですね。親切なアンリからはしじゅうお手紙をいただきますが、それでもどんなふうなのか安心しきれないのです。あなたは書くこと――ペンを取ることを、禁止されていらっしゃいますのね。だけど、ねえヴィクトル、私たちの不安をなだめるために、あなたの手で一筆書いてよこしてくださいませんか。長いこと私は、今度の便こそそれが来るだろうと考えて、伯父さまがインゴルシュタットへおいでになることをやっきとなってお留めしました。そんな長い旅で不自由なさったり、またひょっとすると危険な目にお会いになったりなさると困りますからね。それでも、自分で出かけて行けないのを何度悲しんだことでしょう! 病床に附き添う仕事は、金だけで働く老看護婦に任せてあることと想像しますが、その人は痒いところに手がとどかず、たとい気がつきはしても、あなたのいとこのような気づかいや愛情をもってそれをしてあげはしないでしょう。もっとも、それももう、過ぎ去ったことですね。クレルヴァルから、あなたがほんとうによ
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