。僕は、極地をめぐる海を越えて北極洋に達するみこみでおこなわれた、いろいろな航海の記事を、熱心に読んだものです。発見の目的でなされたあらゆる航海の歴史が、僕たちのよき叔父トーマスの書庫にぎっしり詰まっていたのを、姉さんもおぼえていらっしゃるでしょう。僕の教育はほったらかしでしたが、それでも僕は、一心に書物を読むのが好きでした。そういう書物を昼も夜も読みふけったものです。それらに精通するにつれて、父が亡くなるときに言いおいたことだというので、船乗りの生活に入ることを叔父が僕に許さないと知って、子どもごころにも僕は、ますます残念に思いました。
 こういった幻想は、例の詩人たちをよく読んだとき、はじめて萎みました。この詩人たちは、流れ出たその力で、僕の魂をうっとりとさせ、それを天上に引き上げてくれました。僕も詩人になり、一年間は自分の創り出した楽園に住みました。自分も、ホメロスやシェークスピア並みに、詩の神殿に祀られるとでも思っていたのですね。僕の失敗したこと、その時の落胆がどんなにひどかったかということは、姉さんもよくごぞんじです。しかし、ちょうどそのころ、従兄の財産を相続したので、またま
前へ 次へ
全393ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
シェリー メアリー・ウォルストンクラフト の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング