ていた風が、日没には止んで微風になった。そのそよそよとした風は、水面にさざなみを起すぐらいのもので、海岸に近づくにつれて木々のあいだをこころよくそよがせ、花と乾草のじつに気もちのいい香りを運んでくるのだった。上陸するとき、太陽が水平線の下に沈んだ。私は、岸に着くと、まもなく自分を捉えて永久にまといつく心労や不安が甦ってくるのを感じた。
23[#「23」は縦中横] 最愛の者の死
上陸したのは八時ごろであった。私たちはしばらく、ひとときの光を楽しんで湖畔を歩き、それから宿屋に入って、暗くてぼんやりしてはいるがまだ黒い輪郭を見せている水や森や山々の美しい景色を眺めた。
雨へ落ちていた風が、こんどは西から激しく吹き起った。月は天心に達して傾きはじめたが、雲は禿鷹の飛ぶより速くそれをかすめて光をかげらせ、湖はあわただしい空模様を映して、起りはじめたおやみない浪のためにますます騒々しくなった。と、とつぜん、沛然として雨が降りだした。
私はおちついていたが、夜になって物の形がぼやけはじめるや否や、心に数限りない恐れが起ってきた。拳銃をふところに隠して右手で握りしめながら、私は
前へ
次へ
全393ページ中336ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
シェリー メアリー・ウォルストンクラフト の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング