のときは、自分をぺちゃんこにして、恐怖と絶望のために不名誉だの死だのというあらゆる気づかいも消えてなくなるような、災難がふりかかってくるとは、よもや思いもかけなかった。
 ここで私は、ひと休みしなければなりません。というのは、思い浮んだままにこれから詳しくお話しする事件を憶い起すのは、あらゆる勇気を必要とするのです。


     21[#「21」は縦中横] 思いもかけぬ災難


 私はまもなく知事の前に伴れて行かれたが、知事というのは、ものごしの穏かで柔かな、やさしそうな老人であった。とはいえ、かなり厳しく私に眼をくれてから、案内してきた者に向って、誰がここに証人として出ているのかと尋ねた。
 五、六名の人が進み出て、そのなかの一人が知事に選ばれたが、その男の申し立てによると、昨夜、自分の息子と義弟ダニエル・ニュージェントを伴れて漁に出、十時ごろに強い北風が吹きだしたので、港に入った。月がまだ昇ってなくて、たいへん暗い晩だったので、港で上陸しないで、いつものように、二マイルばかり下の入江で上陸した。その男が漁具の一部を持って先に立って歩き、あとの二人はすこし離れてついて来た。砂浜を歩
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