男は、すぐまた現われたが、手に何か道具を持って母家の裏の畠をよこぎって行った。娘のほうも忙しく、家に入ったり庭に出たりしていた。
「わたしの住まいをよく調べてみると、以前には母家の窓の一つがその一部分を占めていたが、それが板でふさいであるのがわかった。その板の一つにごく小さなほとんど気のつかない裂け目があって、そこに眼をあてるとどうにか中が見透せた。この隙間から小さな部屋が眼に映った。それは、白く塗られてあってきれいだったが、家具らしいものも何ひとつなかった。炉の近くの片隅には、一人の老人が腰かけていて、悲歎にくれたような様子をして手で頭を支えていた。若い娘は家のなかをせっせとかたずけていたが、まもなくひきだしから何やら手を使ってするものを取り出して、老人のそばに膝を下ろすと、老人は楽器を取りあげてそれを弾き、鶫や夜鶯の声よりも甘美な音を出しはじめた。それは、今まで美しいものを見たことのない哀れな出来そこないのわたしが見てさえ、美しい光景だった! 年とったこの百姓の銀髪と慈悲ぶかい顔つきが、わたしに尊敬の念を起させ、娘のやさしいものごしがわたしの愛情を誘った。老人が甘美な哀しみの曲を奏
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