が、今のところその踪跡はわからないし、またわかったところで、あのかわいいウィリアムが生きかえるわけではない!
「帰って来ておくれ、いとしいヴィクトル。エリザベートを慰めることができるのはおまえだけなのだよ。エリザベートは泣いてばかりいて、そうではないのにウィリアムの死の原因か自分だと言って自分を責めるのだが、そのことばがわたしの胸を突き刺すのだ。われわれはみな不幸だ。けれども、そのことは、おまえにとって、帰って来て、われわれを慰めてくれようとする動機を、もう一つ加えたことにならないだろうか。おまえのお母さん! ああヴィクトル! 今となっては言いますが、おまえのお母さんがあの小さな坊やのむごたらしいみじめな死に目に会うまで生きていなかったことを神さまに感謝します!
「帰っておいで、ヴィクトル、暗殺者に対して復讐するという考えを抱いてでなく、われわれの心の傷を痛ませるかわりに医してくれる、穏かな、やさしい気もちで。敵に対する憎しみをもってでなく、おまえを愛する者に対する親切と愛情をもって、この哀しみの家においで。――おまえの悩める慈父
[#地から2字上げ]アルフォンス・フランケンシュタイン
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