ヴィクトル、あの子は殺されたのだよ!
「私はおまえを慰めようとはしない。ただ事態を述べるにとどめよう。
「前の木曜日(五月七日)に、わたしと姪とおまえの弟二人で、プレンパレーへ散歩に行ったのだ。その夕方は暖かくておだやかだったので、われわれは散歩をいつもより遠くのばした。戻ろうと思ったころには、もう日が暮れていたが、そのとき、先に行ったウィリアムとエルネストの姿が見えないのに気がついた。そこでわれわれは、二人が戻ってくるまで腰を下ろして休んだ。やがてエルネストが戻って来て、弟を見かけなかったかと訊ねた。ウィリアムといっしょに遊んでいたが、弟は馳けだしていって隠れたので、探してみたが見つからない、ずいぶんしばらく待ったけれども、戻って来なかった、というのだ。
「この話を聞いてわたしらはかなりびっくりし、夜になるまで探しつづけたが、そのうちエリザベートは、ウィリアムは家へ帰ったのかもしれないと言いだした。ウィリアムは家に見当らなかった。われわれは炬火《たいまつ》を持ってひき返した。あのかわいい坊やが道に迷って、夜の湿気や露に濡れどおしだとおもうと、じっとしておれなかったからだ。エリザベート
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