願いがむらむらと起ってきても、それは苦悶と絶望の発作で中断されるだけのことであった。私は再三、なんとか忌わしい存在に結着をつけようとしたので、私が何か恐ろしいむちゃなことをしでかさないように、たえず人が附き添って見張りしている必要があった。
とはいえ、私には一つの義務が残っていて、考えがそこへいくと、結局は自分の利己的な絶望をひっこめないわけにいかなかった。必要なことは、即刻ジュネーヴに帰って自分の熱愛する人たちの命を見張りし、あの殺人鬼を待ち伏せて、やつの隠れ家のある所に乗りこむような機会があれば、あるいは、やつがふたたび現われて私に危害を加える気になったとすれば、狙いあやまたず、あの奇怪な姿の存在をかたずけることであった。やつの姿は、魂のなかでなおさら奇怪なものとなって私を愚弄するのであった。父は、私が旅の疲れに堪えられないだろうと気づかって、まだ出発を延ばしたいと考えた。というのは、私に打ち砕かれた残骸――人間の影であった。私は腑抜けになってしまった。私は骸骨でしかなく、しかも夜となく昼となく熱が私の体を衰弱させるのであった。
それでも、私がいらいらして、しつこくアイルランドを立つことをせがむので、父は、私の言いなりにするほうがいちばんよいと考えた。私たちは、アーヴル・ド・グラースへ行こうとしている舟に乗り、順風を受けてアイルランドの海岸から出帆した。それは真夜中のことだった。私は、甲板に横になって星を眺め、波のぶつかる音を聞いた。私は、アイルランドを視野から閉ざす暗やみを喜んだ。まもなくジュネーヴが見れるのだと考えると、熱っぽい喜びで脈搏が鼓動した。過去は、怖ろしい夢のなかのように見えた。けれども、乗っている船と、アイルランドの忌まわしい海岸から吹く風と、あたりの海は、自分が幻想にだまされているわけでないこと、私の友人でありもっとも親しい仲間であったクレルヴァルが、私と私のつくった怪物のために犠牲者となったことを、いやおうなしに認めさせるのであった。私は、記憶の糸をたぐって、自分の全生涯を、家の人たちとジュネーヴに住んでいたころの穏かな幸福、母の死、自分のインゴルシュタットへの出発などを憶いかえした。見るも怖ろしい敵を造り出すように私を駆りたてたあの病的熱狂を憶い出して、私は戦慄し、あいつがはじめて生命を得た夜のことを追想した。私は、筋みちを辿って考える
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