です。それは、たえず、僕の想像のなかでは、美と歓びの国として現われてくるのですよ。そこでは、マーガレット、太陽はいつでも眼に見え、その大きな円盤が地平線の上に懸って、永遠の輝きを放っているのです。そこには――というのは、姉さん、あなたの前ですが僕は、僕以前の航海者たちをかなり信じておればこそそう言うのですが――そこには雪も霜も見られません。そこで僕たちは、いくら驚歎してもしきれぬ国、人の住める地球上に今までに発見されたどんな地方にもまさる美しいすてきな国に、吹き送られるかもしれません。天体現象が疑いもなく未知の寂寞のなかによこたわっているように、そこの産物なり地勢なりもたとえようのないものかもしれません。永久の光の国で、何が期待されないと言うのでしょうか。僕はそこで磁針を引きつけるふしぎな力を見つけるかもしれませんし、また無数の天体観察をやってそれをだんだん正確なものにしてもいけるでしょうが、いつもきまって変らないその外観上の偏心率を示すためには、どうしてもこの旅か必要なのです。僕は、これまで訪れたことのない世界の一角を眼にして、自分の燃えるような好奇心を満足させ、人類の足跡を印したことのない国を踏むかもしれません。こういうことが僕を誘惑するわけで、それだけでも僕は、危険をも死をも怖れない気もちになりますし、子どもが休みの日に友だちと語らって、土地の川に何かを見つけに行こうと小舟に乗るときに感じる、あの喜びに駆られて、このほねのおれる旅を始めようとするところです。しかし、こういう臆測がみなまちがっていたとしても、現在のところではそこに達するのに何箇月かかるかわからないような、極地に近い土地への航路を発見することで、あるいはまた、かりそめにもできないことでないとすれば、僕の企てたような計画によってしかやりとげられない磁力の秘密を突きとめることで、全人類の最後の世代に至るまで計り知れぬ利益を受けるだろうということに、あなたもとやこう言うことはできないはずです。
こんなことを振り返って考えていると、この手紙を書きはじめたときのぐらついた気もちが吹きはらわれて、心が天にものぼるような熱情でもって白熱するのがわかります。というのは、魂がその知的な眼を据えつける一点としての揺るぎない目標ほど、人の心を平静にしてくれるものがないからです。この探検は僕の幼い時から大好きな夢でした
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