新しい街にくるたび[#「たび」は底本では「旅」]に、それが自分のさがしている街ではないのかと思いました、また女の人にあうたびにもしや自分の母親でないかしらと思いました。
 マルコは一生懸命に歩きました。と、ある十文字になっている街へ出ました。マルコはそのかどをまがってみると、それが自分のたずねているロスアルテス街でありました。おじさんの店は一七五番でした。マルコは夢中になってかけ出しました。そして小さな組糸店にはいりました。これが一七五でした。見ると店には髪の毛の白い眼鏡をかけた女の人がいました。
「何か用でもあるの?」
 女はスペイン語でたずねました。
「あの、これはフランセスコメレリの店ではありませんか。」
「メレリさんはずっと前に死にましたよ。」
 と女の人は答えました。
 マルコは胸をうたれたような気がしました、そして彼は早口にこういいました。
「メレリが僕のおかあさんを知っていたんです。おかあさんはメキネズさんの所へ奉公していたんです。わたしはおかあさんをたずねてアメリカへ来たのです。わたしはおかあさんを見つけねばなりません。」
「可愛そうにねえ!」
 と女の人はいいました。そして「わたしは知らないが裏の子供にきいて上げよう。あの子がメレリさんの使《つかい》をしたことがあるかもしれないから――、」
 女の人は店を出ていってその少年を呼びました。少年はすぐにきました。そして「メレリさんはメキネズさんの所へゆかれた。時々わたしも行きましたよ。ロスアルテス街のはしの方です。」
 と答えてくれました。
「ああ、ありがとう、奥さん」
 マルコは叫びました。
「番地を教えて下さいませんか。君、僕と一しょに来てくれない?」
 マルコは熱心にいいましたので少年は、
「では行こう」
 といってすぐに出かけました。
 二人はだまったまま長い街を走るように歩きました。
 街のはしまでゆくと小さい白い家の入口につきました。そこには美しい門がたっていました。門の中には草花の鉢がたくさん見えました。
 マルコはいそいでベルをおしました。すると若い女の人が出てきました。
「メキネズさんはここにいますねえ?」
 少年は心配そうにききました。
「メキネズさんはコルドバへ行きましたよ。」
 マルコは胸がドキドキしました。
「コルドバ? コルドバってどこです、そして奉公していた女はどうなりまし
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