くことはあつても、その団体を支配することなどは事実としてはないことであります。
今、植物の例にうつります。桃の木を自然の生育に委せてをくと多くの花が咲きますが、その三分の一ばかりが小さな実を結びます。それから成熟して立派な実となるのは、又その三分の一ばかりであります。進化論者はこれも生存競争の為だといふかもしれませんが、それは一の既定概念による判断に過ぎないのであります。見方によつては生存競争といふよりも、むしろ相互扶助の精神の現はれと考へることも出来ます。林檎や梨の木も同様であります。
皆さんも御存知の通り木の皮の下には白い汁が流れて居ります。あの液汁が余りに盛んに下から上へ上ると花は咲きません。たゞ木が大きくなり葉が茂るばかりであります。今その枝を少し曲げて水平にすると花が咲き、又多く実ります。これは光線と液汁との調和が取れるからであります。この時に落ちていく花は競争に負けたのではなくして、太陽の光線との調和の為めに多く咲き、後には他を実らす為に犠牲になつたと考へたいと思ひます。多く咲くのは調節のためであります。戦争に於て第一線に立つて金鵄勲章をもらふ者のみが国防の任に当るので
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