て測量器械の様なものを持つてをります。
〔以下五百二十字分原稿空白〕
 その間の変化を考へてみると極めて興味ある事実が潜んでゐます。最初は天文も分らなければ暦も無かつたことは言ふまでもありません。だん/″\日が短くなる、寒くなる、天気は毎日陰気になる。人々はどうなることかと心配してゐる。こんな時に経験に富んだ老人があつて「何も心配することはない。もう幾日位辛抱しろ。すると又暖い太陽がめぐつてくる」と教へて人々の不安を慰めたとする。又、作物の種子を播く時期や風の方向の変る時期、或は大風の吹く時期なども老人は知つたでせう。二百十日もかうして人々に知られるようになつたと思ひます。かゝる長老は村の生活になくてはならぬ人で村人に尊敬をされるのは自然であります。村人は或は彼を特別の才能ある者と思ひ、或は天と交通ある者と考へるかもしれません。そこで長老は喜んで自分の経験を多くの村人に伝へないで、自分の子孫、或は特別の関係ある者にのみ伝へて秘伝とするやうになります。村人はその秘伝の一族に贈物、或は捧物をして御利益を受けやうとする様になります。そこで彼等は労働しないでもその秘伝のお蔭によつて生活が出来る
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