らは気づかずして、一脈の魂の涼しさを味わっているかしれない。人間を包む[#「人間を包む」に傍点]窒息しそうな濁った熱っぽい空気を今はじめて気がついた[#「気がついた」に傍点]ともいえよう。
 大学全体が、研究全体が、そして人間がついに[#「人間がついに」に傍点]すべて蓄音器の針[#「蓄音器の針」に傍点]のように、どれをとってみても一様にキチンとすかし絵の入ったベルトを巻かれた箱の中に横たわるのであろうか。
 人々の不安はそこになければならず、またその不安は除去[#「除去」に傍点]されなければならず、新しい形をもってかたちづくらるべき不安でもある。
[#地付き]*『京都日出新聞』一九三三年六月五日号



底本:「中井正一全集 第四巻 文化と集団の論理」
   1981(昭和56)年5月25日第1刷
初出:「京都日出新聞」
   1933(昭和8)年6月5日
入力:鈴木厚司
校正:染川隆俊
2009年8月23日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全2ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中井 正一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング