前にして、青年を把握していることへの嫉視は当然予想さるるところである。この大きい動きが、それ等の人々を父兄とするところの青年に一つの分解作用を及ぼすことはその第一の原因と見るべきであろう。また青年自身が、自ら立候補または運動にまき込まれるにあたって、安易なる、利己的な道へ誘惑されるのもまた、当然な経路である。この青年自らの自己崩壊はその第二の原因となるであろう。第三は、全体に反民主主義的な土用浪のような潮の高まりが、田舎の第一線で孤独に戦っている自分には切々と感ぜられるのである。商業資本機構の中にしみ込んだボス的封建制は民主的再建設に対しては、そのスタートを明らかに拒否しはじめている。また教育界が同じ反動の徴候を示しはじめている。去年の今頃の暗澹たる思いは、しかし、攻勢における手不足の暗さであるが、今は何か守勢的なるものすら感ぜしめる。手塩にかけた好青年が一人、一人去りゆくのをじっと見つむることは言いようもなく寂しい思いである。
図書館も、市の意向で、読書以外の文化運動を一切禁ぜられた。如何に、第二年目を組立てて行くか、自分の家に集まる一握りの青年を基礎に、歴史のこの大きなリズムの中
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