すらがあった。
七百名の体温を満した夏の大講堂の盛んなる光景は、豊かな、豊かな、何か溢るる如きものがあった。三原でも、十日間、科学史、経済史、文化史、音楽史の講座をもち、二百五十人の人を締切って聴講せしめた。何れも成功した。数字的調査の結果を左に記して今後の参考としたい。
尾道の講座における聴講者の年齢別を見るに
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年齢 %
一七 八・〇三
一八 二九・一二
一九 三二・一三
二〇 二八・一二
二一 二三・〇九
二二 二四・一〇
二三 一六・〇六
二四 一六・〇六
二五 八・〇三
二六 七・〇三
二七 六・四三
二八 七・〇三
二九 三・〇一
三〇 六・〇二
三一 二・〇一
三二 三・〇一
三三 一・〇〇
三四 一・〇〇
三五 四・〇一
三六 一・〇〇
四二 一・〇〇
四三 二・〇一
四六 一・〇〇
四九 一・〇〇
五四 三・〇一
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性別の統計では 男 五七・五% 女 四二・五%
職業では、未婚女子が全体の三二%を占めており、それが動員から帰って間もない状態であるのを反映して無職の計数が一位を占めている。
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無職 二六 %
大学在学 二・五
会社員 一九・〇
高専在学 一五・六
工員 四・三
女専 一〇・〇
農業 五・〇
中学校 三・三
教員 六・七
官吏 二・九
商業 二・九
女工 〇・五
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学歴の計数は小学校卒業一三%、中学校卒業三九・二%、大学専門学校在学一八・一%等である。
講座で興味を感じたのは、論理学三〇%、ソヴィエート事情二二%は意外とするところであった。希望する講義内容の結果順位を見るに、社会、哲学、文学、自然科学、政治、経済、美術、宗教の順位である。
一般の輿論調査にある感想は、かかる講座の継続を絶対多数が希望している。そして、各専門でもっと突込んだ研究を要求している。そして一つの講座の長時継続を希っている。それは土地における不断の開講への願である。三原市の調査も驚くべきほど同じ%をしめているのは興味深かった。ただ一つの意外としたことは、年齢計数で、女子の四〇歳台が一五%で、三〇歳台が七・五%であるのが目立っただけである。ここでも、専門的な高度な学問が希求されていて、殊に職工が異常な学問的意欲を示していることであった。三原のカント講座は、百名の聴衆の中で三十名余りは職工であり、二十名余りは農民であった。尾道でも、ちょうど夏期大学中青山君が私の家にいるとき、一農村青年が、「やっとカントの『純粋理性批判』を読み終りました」と言って、貸した本と南瓜を二つ持って来たので、青山君はとてもびっくりしていた。私はそれがそんなに驚くべきことかと、今更の如く、思いかえしてみたのであった。
夏は只四日しか私は、私の家に寝ることが出来なかった。農村恐慌への対策と村民の団結のために、封建遺制の底に沈湎している彼等に理論を説く事は、なかばは肉体労働的なつもりでいなければならない。しかし各地各様の相貌をもって立上りつつあった。三反百姓の多い土地と、一町百姓の多い土地ではまた、その反応も各々異っていた。
秋になると、青年の要求は論理学に集中して来た。論理学を興味多く連続講義することは、実に自分にとってはつらい任務である。このやや大きくなって行った文化運動は、秋立つにつれて、一つの反動期に入って行った感がある。地方選挙戦を眼前にして、青年を把握していることへの嫉視は当然予想さるるところである。この大きい動きが、それ等の人々を父兄とするところの青年に一つの分解作用を及ぼすことはその第一の原因と見るべきであろう。また青年自身が、自ら立候補または運動にまき込まれるにあたって、安易なる、利己的な道へ誘惑されるのもまた、当然な経路である。この青年自らの自己崩壊はその第二の原因となるであろう。第三は、全体に反民主主義的な土用浪のような潮の高まりが、田舎の第一線で孤独に戦っている自分には切々と感ぜられるのである。商業資本機構の中にしみ込んだボス的封建制は民主的再建設に対しては、そのスタートを明らかに拒否しはじめている。また教育界が同じ反動の徴候を示しはじめている。去年の今頃の暗澹たる思いは、しかし、攻勢における手不足の暗さであるが、今は何か守勢的なるものすら感ぜしめる。手塩にかけた好青年が一人、一人去りゆくのをじっと見つむることは言いようもなく寂しい思いである。
図書館も、市の意向で、読書以外の文化運動を一切禁ぜられた。如何に、第二年目を組立てて行くか、自分の家に集まる一握りの青年を基礎に、歴史のこの大きなリズムの中
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